UPSの電源バックアップ時間と機種の選び方についてのメモ
無停電電源装置(UPS)のスペックごとの稼働可能時間を調査して早見表を作成し、無停電電源装置(UPS)の機種を選ぶ際に参考にできる情報をまとめたメモです。
もくじ
目的
停電が発生した際に無停電電源装置(UPS)がどの程度の時間を稼働できるのか、メーカの公式サイトの情報を参考にして早見表としてまとめます。
結論として、メーカの公式サイトに「負荷運転時間」の計算ツールがあったため、そちらを使用していくつかのパターンを調査して早見表として取りまとめることができました。
デスクトップパソコン(windows10)にUPSを接続して停電時の自動シャットダウンの設定を入れる方法はこちらの記事をお読みください。
→ デスクトップPCにUPSを接続して停電対策をしたときのメモ(新しいタブで開きます)
NAS(QNAP)にUPSを接続して停電時の自動シャットダウンの設定を入れる方法はこちらの記事をお読みください。
→ APCのUPSとQNAPのNASを連携させてみたメモ(新しいタブで開きます)
→ CyberPowerのUPSとQNAPのNASを連携させてみたメモ(新しいタブで開きます)
背景
夏から秋にかけて局地的豪雨の落雷や台風などにより、突然の停電に見舞われることも出てくると思います。
その際、バッテリを搭載していないデスクトップパソコンやNASなどのネットワーク機器はもちろんのこと、テレビやテレビ番組を録画するハードディスクレコーダなどの電源を無停電電源装置(UPS)でバックアップすることで、停電時にも電源が落ちず稼働させることが可能です。
すぐに停電から復旧しない場合は機器の電源を安全に切ることができるなど、突然の電源オフによるトラブルや故障の可能性を低くすることができるため、無停電電源装置(UPS)は非常に有用な機材と思っています。
特にゲーミングパソコンやクリエイター向けパソコンをお使いの方でゲームプレイ中や編集作業中などに電源が突然オフになってしまうことで損害が発生する可能性がある方は無停電電源装置(UPS)の導入を検討すると良いと思います。
本記事は無停電電源装置(UPS)の機種を選ぶにあたり、どのくらい電源をバックアップできるのかパッと見てわかる情報がなかなか見つからなかったため、今後の自分のためにも取りまとめておきます。
機器の情報
今回登場する機器の型番やバージョンは次の通りです。
■APC BR1000S-JP
・出力波形:正弦波
・方式:ラインインタラクティブ
・バックアップ電力容量:600W
■CyberPower CPJ1200
・出力波形:正弦波
・方式:ラインインタラクティブ
・バックアップ電力容量:720W
無停電電源装置(UPS)について
まずはじめに、本項目にてUPSの基礎的な情報とUPSの機種を選ぶ際に役立ちそうな情報をまとめておきます。
とても簡単に言うと、バックアップ電力容量が多いモデルを購入すれば停電時に長く給電することができますので、予算に余裕がある方はお好きなメーカの最大容量のモデルを購入すればよいかと思います。大は小を兼ねます。
UPSとは
UPSとは「Uninterruptible Power Supply」の略称であり、日本語では「無停電電源装置」と呼びます。
停電などの電源障害が発生した場合には内蔵しているバッテリから接続されている機器に電力を供給し続けてくれる装置です。
例えばデスクトップパソコンにUPSを接続した場合、停電が発生した際でもパソコンの電源が落ちること無くしばらくの間は電源が維持されるため、データの保存や安全なシャットダウン操作をする時間を確保することができます。
仕事で資料を作成している方やイラストや動画編集などをしているクリエイターの方など、突然の停電でデスクトップパソコンが落ちてしまうと影響が大きい方はUPSを導入することをおすすめします。
他にも、ファイル保管にNASを使用している場合はNASをUPSに接続しておくと停電による突然の電源オフが回避できますので、NASの破損や故障などのトラブルが起こりにくくなります。
また、テレビやテレビ録画のハードディスクレコーダをUPSに接続しておくことで、アンテナやケーブルに破損が無ければ停電時にもテレビの視聴や録画が継続してできるため、家電製品に使用することも有用と思われます。
UPSの電源バックアップ時間の早見表
以下にUPSのバックアップ電力容量ごとのバックアップ時間の早見表としてまとめておきます。
電源のバックアップ時間の計算には、APC社の公式サイトの各UPSモデルのページにある「負荷運転時間」の計算ツールを利用しています。
あくまでも計算上の運転時間のため、UPSが設置されている環境や稼働年数に依って電源をバックアップできる時間は変化しますので、余裕を持って選定することをおすすめします。
・APC APC RS1200VA Sinewave Battery Backup 100V
※他モデルも同様に商品ページ内の「負荷運転時間」の計算ツールを参考にしています。
モデル\消費電力 | 100W | 240W | 330W | 600W | 720W |
400VA/240W | 22分45秒 | 05分39秒 | — | — | — |
550VA/330W | 23分55秒 | 06分18秒 | 02分55秒 | — | — |
1000VA/600W | 52分00秒 | 17分46秒 | 11分00秒 | 03分07秒 | — |
1200VA/720W | 1時間07分 | 23分51秒 | 15分16秒 | 05分18秒 | 03分21秒 |
UPSに接続予定の機器の消費電力を確認
UPS選定の基準にするため、接続したい機器ごとの最大消費電力を確認します。
メーカ製のデスクトップパソコンであれば構成表や取り扱い説明書に記載があると思われます。
自作パソコンをUPSに接続したい場合は各パーツの消費電力を計算するか、最大消費電力という面から電源ユニットの容量を参考にしても良いかと思います。
NASやネットワーク機器やその他の機器をUPS接続したい場合も考え方は同じで、取り扱い説明書の記載を確認するかACアダプタの記載されている数値から計算して消費電力を判断します。
なお、消費電力を実測すると正確に判断することができますので、ワットチェッカーをお持ちの方は消費電力を実測してみると良いかと思います。
例として以下の2台をUPS接続したい機器とします。
・デスクトップパソコン:300W(最大消費電力)
・液晶モニタ:30W(最大消費電力)
デスクトップパソコンと液晶モニタの合計の最大消費電力は「330W」となりますので、その数値を元にUPSを選定します。
UPSの選定方法
UPSの選び方としては、UPSを接続したい機器を停電時にどの程度の時間稼働させたいかを考えることで最適なUPSの機種にたどり着くことができます。
例として、前項目の通りUPSに接続したい機器の合計の最大消費電力は「330W」として考えます。
上記の「早見表」を参考にして、最大消費電力330Wの場合の電源バックアップ時間を簡単にまとめます。
・400VA/240W:最大消費電力が製品の最大値を超えているため使用不可
・550VA/330W:3分程度の電源バックアップが可能
・1000VA/600W:11分程度の電源バックアップが可能
・1200VA/720W:15分程度の電源バックアップが可能
したがって、停電から10分間稼働させたい場合は「1000VA/600W」以上のモデルを選択する必要があります。
上記はあくまでも最大消費電力での計算のため、パソコンで何も処理がされていない無負荷の際は消費電力が少なくなるため、もっと長い時間電源をバックアップすることができる場合があります。
例えば、消費電力が「100W」として考えた場合の電源バックアップ時間を簡単にまとめます。
・400VA/240W:最大消費電力が製品の最大値を超えているため使用不可
・550VA/330W:24分程度の電源バックアップが可能
・1000VA/600W:52分程度の電源バックアップが可能
・1200VA/720W:1時間程度の電源バックアップが可能
上記で選択した「1000VA/600W」モデルの場合、停電から52分稼働させることが可能と推察できます。
なお、接続した機器の最大消費電力がUPSのスペックを超えている場合、停電時に電源をバックアップできないことがある上に機器の故障の原因にもなりますので、「最大消費電力」がUPSのスペックを超えないように機種を選ぶと良いと思います。
また、自作パソコンやゲーミングPCなどのハイスペックマシンで1000W電源ユニットを使用している場合は、必ずベンチマークなどの最大負荷時の消費電力をワットチェッカーを使って実測してください。実測した消費電力が「720W」以下であれば「1200VA/720W」のモデルが利用可能と思われます。前述の通り消費電力がUPSのスペックを超えてしまうとトラブルの元となりますので十分注意が必要です。
以上がUPSについての簡単なまとめです。
使用中の無停電電源装置(UPS)
実際に自宅環境にて使用している2つのUPSを紹介します。
主にNASとネットワーク機器、デスクトップパソコンで使用しています。
APC BR1000S-JP
1つめはAPCのBR1000S-JPという無停電電源装置(UPS)です。
BR1000S-JPとパソコンやNASとの接続はUSBケーブルを使用します。
バックアップコンセント数は4口あり、バックアップ電力容量は600Wの機種です。
サージ保護のみのコンセントの数は4口あり、その他に1000Base-TのRJ-45コネクタが付いており、1台で電源とLANケーブルのサージ保護をすることができます。
また、出力波形が商用電源と波形が近い「正弦波」となっていることも特徴のひとつであり、パソコンやNASなどの機器を接続する場合に最適です。
自宅環境ではBR1000S-JPにQNAPのNASを2台とネットワーク機器をいくつか接続しており、消費電力は120W前後です。電源のバックアップ時間はBR1000S-JP本体の画面表示で41分と確認できました。
※参考リンク:「APC UPS 正弦波」のAmazon検索例(新しいタブで開きます)
CyberPower CPJ1200
2つ目はCyberPowerのCPJ1200という無停電電源装置(UPS)です。
CPJ1200とパソコンやNASとの接続はUSBケーブルを使用します。
バックアップコンセント数は6口あり、バックアップ電力容量は720Wの機種です。
サージ保護のみのコンセントの数は6口あり、その他に1000Base-TのRJ-45コネクタとRG6/Uタイプの同軸ケーブルの端子が付いており、電源とあわせてLANケーブルとテレビのアンテナケーブルも1台でサージ保護をすることができます。
さらに、正面にはUSB充電ポートも付いており、非常時にスマートフォンなどのUSB給電が可能な機器を充電することができます。
また、出力波形が商用電源と波形が近い「正弦波」となっていることも特徴のひとつであり、パソコンやNASなどの機器を接続する場合に最適です。
自宅環境ではCPJ1200にデスクトップパソコンを接続しています。
Ryzen9 3900XにRTX3090を搭載させたゲーミング目的の自作パソコンのため、負荷時には500Wくらいの電力を消費します。
高負荷時の電源のバックアップ時間は本体の画面表示で10分と確認できました。
無負荷時は100W程度の消費電力のため、50分程度の電源のバックアップ時間がありました。
※参考リンク:「CyberPower UPS 正弦波」のAmazon検索例(新しいタブで開きます)
おすすめの無停電電源装置(UPS)
個人的におすすめしたいUPSはCyberPowerのCPJ1200です。
理由としてはコストパフォーマンスが高い点もありますが、接続できるコンセントの数が比較的多いため電源周りのケーブルを集約できる点や1000Base-TのRJ-45コネクタとRG6/Uタイプの同軸ケーブルの端子が付いているため電源とあわせてLANケーブルとテレビのアンテナケーブルも1台でサージ保護をすることができるためです。
テレビのアンテナケーブルは屋内に引き込まれる際にサージ対策が行われているとは思いますが、テレビやレコーダーの直前で追加のサージ対策ができることで安心感が高まるのではと思います。
以下にCyberPowerのBackup CRシリーズの比較表を記載します。
消費電力や用途から、使用用途に一番合っているものを選択すると良いかと思います。
まとめ
簡単ではありますが無停電電源装置(UPS)の選び方についてまとめました。
停電時にどれくらい給電することができるのかすぐ見てわかる資料が無かったため記事としてまとめましたが、ほぼ自分用ですね。友人に解説する際に役立てようと思っています。
実際にUPSを自宅環境にて利用していますが、2020年の台風19号による停電時や落雷時の瞬時電圧低下など何度か活躍していますので、私はもうUPS無しの生活には戻れないと思っています。
ちなみに、無停電電源装置(UPS)は停電時の緊急用のため持ち運ぶものではありません。
キャンプやアウトドアなど外出先に持ち出しての電源利用にはポータブルバッテリが最適ですので、お間違い無いようお気をつけください。
関連情報
本記事にて取り扱った機器や関連する機器のAmazonリンクを掲載します。
各商品ページのレビューには有用な情報が掲載されていることもありますので、宜しければご確認ください。
記事中にも取り上げているAPC社のUPSです。
おすすめのUPSとしてはCyberPower社のUPSを挙げましたがAPC社のUPSも高品質のため、選択肢として検討しても良いかと思います。
また、キャンプやアウトドアでの電源利用にはポータブルバッテリが最適ですので、おすすめのモデルを以下に記載します。
以上。